「安保法案 東京大学人緊急抗議集会・アピール」実行委員会

7/10東京大学人緊急抗議集会レポート

集会アピール

於 2015年7月10日 「安保法案 東京大学人緊急抗議集会」


1、私たちは安全保障関連法案の今国会での成立に反対する。
 第一に、政府は立憲主義を蹂躙している。憲法9条のもとで集団的自衛権が許されないというのは、学説上も、政府解釈でも、司法の場でも、半世紀以上とられてきた解釈である。
 第二に、政府は民意に背き、国民に対する誠実な説明責任すら果たしていない。これほど国民に直接的な影響を持つ立法であるにもかかわらず、説明もなおざりに、数の力で強行する。これを民主主義ということができるだろうか。
 第三に、この法案は未来に巨大な禍根を残す。法案成立の先には何があるだろうか。自衛隊の活動への歯止めがはずれれば、軍事同盟を結ぶアメリカの戦争に本格的に加担することになる。日本がテロの対象国となる危険性は格段に高まる。米軍基地は維持・拡大に向かい、沖縄の民意は踏みにじられるだろう。アジアの周辺諸国やイスラム諸国とのあいだにいっそうの緊張が生まれ、実際に軍事的な行動を行えば、多くの国を敵に回すことになる。
 戦時下では言論の自由が実質的に、また制度的に制限される危険があり、学問研究の自由もおびやかされるだろう。そして、国民が主権者として行動する権利が失われる。

2.道はこれだけではない。
 日本が世界の国々とどのような関係を結んでいくか。私たちには、多様な意見・対案がある。「集団的自衛権を導入しなければ国際貢献ができないということはない」、「国際貢献の相手は米国だけではない」、「自衛隊が復興支援活動を行うときにも、戦争を放棄した日本だからこそ、現地の人びとからも歓迎された」、「憲法9条があるからこそ、東アジアに平和に基づく国際関係を広げる役割を日本が果たせる」等々。日本の安全保障政策や外交政策について、法案を廃案にしたあとも、私たちは議論を続けていく。

3.私たち一人一人に行動する責任がある。
 私たちは、自分たちの生活をまもるために、自覚的に行動しなければならない。一人ひとりが立ち上がり、さらに、私たちが東京大学人に呼びかけたように、各地のコミュニティで行動をつくることができれば、これまで表面に出なかった声も呼び起こす。このようにしてかつてない規模でのうねりを起こしてこそ、政権の暴走を阻止し、法案を廃案にすることができる。
 私たちはまた、東京大学の構成員としての社会的責任も果たしたい。東京大学には学問研究の拠点としての社会的使命がある。東京大学という巨大な機構が、もっぱら権力のために使われるか、それともより広い人類社会のために使われるかは、日本社会の帰趨にも大きな影響を持つ。軍事研究への大学の協力の要請など、目前で問われている問題もある。私たちは、この東京大学の力が正しく活かされるように責任を果たさなければならない。戦前、東京帝国大学は戦争遂行の協力者となり、学問の自由を手放し、多くの学徒を戦場に送る破局的な過ちを犯した。この惨禍をふたたび繰り返さないことは、私たちの先人への誓いであり、未来の世代への責任である。

4.行動提起
 この意思を実践するため、私たちはさらなる行動をすすめる。
 一つ、東京大学内における行動と議論を前進させる。法案の廃案まで、アピール賛同の拡大や情報発信をするほか、個々人が議論をまきおこし、平和に貢献する東大につくる。  二つ、学外にたいし、各種メディアを通した発信にとどまらず、この署名・メッセージを国会議員や行政に届けたり、SEALDsその他の主催する抗議行動に参加するなど、あらゆる方向から政府に圧力をかける。
 三つ、私たち個人が、政治的自覚と行動を確かなものとするため、それぞれの立場で学び続ける。連帯強化と両立して、一人として独立する姿勢があってこそ、学問の自由の真価を発揮し、社会の発展に貢献することができる。

 以上のような行動の発展に力を尽くすことを、ここに決意し、集会アピールとする。ともに頑張りましょう。


メディア掲載

【時事通信報道:2015/07/10-22:50】
安保法案「今国会成立に反対」=東大生、抗議集会でアピール採択
 国会で審議中の安全保障関連法案に反対する集会が10日夜、東京大学駒場キャンパス(東京都目黒区)で開かれた。300人以上の東大生やOBが参加し、「今国会での成立に反対する」とのアピールを拍手で採択した。
 憲法改正に反対する「九条の会」事務局長の小森陽一東大教授(日本近代小説)を呼び掛け人に加え、学生中心で発足した「安保法案 東京大学人緊急抗議集会・アピール実行委員会」が主催した。会場となった教室は満員となり、学生らが廊下まであふれた。
 集会では「安全保障関連法案に反対する学者の会」発起人で元教育学部長の佐藤学名誉教授(教育学)らが講演。「安倍首相は戦争をする国にしようとしている」と政府を批判、学徒出陣を引き合いに「戦争でいつも犠牲となるのは子どもと若者で、痛いほど歴史で味わったはずだ」と訴えた。
 スピーチに立った理科1類1年の男子学生は「これまで関心がなかったが、このままではよく分からないまま強行採決されてしまう。一緒に考えて意見表明していこう」と呼び掛けた。
 司会を務めた法学部3年のさん(21)は「強行採決は許されることではない。私たち世代の責任で止めなければならない。東大から発信することで、全国に運動を広げたい」と話した。(了)

【東京新聞2015年7月11日付1面および27面より】
「この政治続けば、闇の時代になる」 反戦へ 東大の英知
 安全保障関連法案の採決強行に反対し、東京大の学生や教職員、OBらが十日夜に催した抗議集会。戦前に軍国主義の波にのまれ、学問の自由を失い、多くの学徒が戦争に動員された。日本のアカデミズムを担う自覚から「平和と民主主義の破壊を止め、痛苦の歴史を繰り返さない」と、世論や学者に耳貸さぬ安倍政権に異議を唱えた。 (辻渕智之、中山高志)

 「こんな現実のため、こんな時代を迎えるために、私たちは学んできたわけじゃない」。東大で教員を二十年以上務めた佐藤学名誉教授(教育学)が声を震わせた。「この法案を支持する人は言う。憲法九条にしがみつくのは理想論だと。しかし、イラク戦争では五十万人の子どもが亡くなった。戦争で犠牲になるのはいつも若者と子どもだ。これはリアリズムだ」
 駒場キャンパス(東京都目黒区)の講義室に大きな拍手が響いた。佐藤氏は、太平洋戦争では東大から少なくとも三千三百人が学徒出陣し、半数以上が命を失ったとも話した。
 集会を呼びかけた一人、(よしき)さん(19)=理科一類一年=も「今の政治が続けば僕が大人になるころ闇の時代になってしまう。首相は、なぜ法案が必要なのかという問いを抹殺している」と語った。
 集会は憲法勉強会などを開いている学生有志が六月下旬、教授陣に声を掛けて実現した。市野川容孝(やすたか)教授(社会学)は「表だって反対することにしらけた社会の空気の中、学生や教職員の危機感が強かった表れ」とみる。東大生らは、国会前で抗議を続ける首都圏の大学生らのグループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」と連携する。
 集会には東大OBら五百人以上から賛同メッセージが寄せられた。
 文学部卒で思想家の内田樹(たつる)さんは「ここで食い止めないと、遠からず日本人はまた巨大な災厄を隣国と自分たち自身の上に及ぼす」とつづった。

◆戦中は軍事研究に加担
 東大は戦中から戦前にかけて軍需生産に必要な技術者を育て、工学部が二つ、兵器製造を研究する造兵学科まであった。戦後、安保闘争などに積極的に参加したのとは様変わりし、近年は国に異議を唱える看板はキャンパスに見当たらなかったが、教職員や学生が一体となって声を上げた。
 戦後の一九五〇年五月、東大トップの南原繁学長(当時、写真)は終戦処理をめぐり、吉田茂首相(当時)から「国際問題を知らぬ曲学阿世(きょくがくあせい)(学問を曲げて世間におもねる)の徒」と非難される。米国と講和交渉を進めようとする政府に反発し、旧ソ連も含む全面講和を主張したからだった。
 この日の抗議集会を呼びかけたさん(21)=法学部三年=は、南原発言を知っているといい、「社会の圧力に負けず信念を持つ。それが学問を志すことだ」と話した。
 六〇年には、政府が日米新安保条約を国会で強行採決した。当時の政権トップは、安倍首相の祖父の岸信介首相。
 それに反対した安保闘争で、東大生の樺(かんば)美智子さん=当時(22)=が国会敷地内での警官隊との衝突で死亡した。六八~六九年の東大紛争では、大学側への抗議が全国の大学に拡大。集会に参加した男子学生(20)は「東大には発信力がある。こういうときに声を上げるのは大切だ」と話した。
 戦後、東大は軍事研究を一切行わない方針を引き継いできた。ある男性職員は、安倍政権下で研究予算を含む防衛費が増大していると指摘し、「軍事研究の方に流れる危険性は大きい」と懸念した。 (了)

【しんぶん赤旗2015年7月11日付、12日付】
東大で学生・教員緊急抗議集会 “今の政治続けば日本は闇”

 「今の政治が続いたら、将来日本は“闇”になる」「立憲主義と民主主義を守るためにこのような集会が必要です」(呼びかけ人の一人、東京大学理科1類1年生)―こんな思いで「安保法案 東京大学人緊急抗議集会」が10日、東京大学駒場キャンパスで開かれました。同大学の学生・大学院生と教員が参加する実行委員会が主催。
 「強行採決絶対反対」書かれた赤い横断幕が掲げられた会場に300人以上が参加。学生・大学院生も多数参加し会場は満員に、戦争法案反対の熱気に包まれました。
 集会は4人の学生、1人の大学院生、市野川容孝総合文化研究科教授、小森陽一教授、横山伊徳史料編纂(へんさん)所教授など学生と教員が共同で呼びかけ開催されました。
 登壇した高橋哲哉教授は「私は東大に30年いるが、このような学生と教員の取り組みは初めてだ。大学人が今の状況に危機感を持っている」と発言。佐藤学名誉教授は「今回の法案は戦後最大の平和と立憲主義の危機です。今、行動しないと後の世代に禍根を残す」とよびかけました。そのほか、間宮陽介青山学院大学特任教授などが発言しました。
 呼びかけ人の学生の一人、男性(法学部3年)は、「東大での取り組みを一つのきっかけに、全国の大学で反対の声を上げてほしい」と述べました。
 アピールへの賛同者は、6月29日以降2週間足らずで572人(10日現在)になっています。

【エコノミックニュース2015年07月12日 08:49配信】
東大学生、教授ら安保法の今国会成立反対へ集会

 安保法案の今国会の成立に反対する東京大学の学生、大学院生、教授らが10日、緊急集会を東大駒場キャンパスで開き「集団的自衛権を導入しなければ国際貢献できないわけではない」「自衛隊が復興支援活動を行うときにも戦争を放棄した日本だからこそ、現地の人々からも歓迎された」などの集会アピールを採択。アピールは1人1人行動する責任があると運動の輪をひろげていこうと呼びかけている。
 東大関係者らの集会の背景には「戦前の東京帝大時代、東大が戦争遂行協力者になり、学問の自由を手放し、多くの学徒を戦場に送る破局的な過ちを犯した。この惨禍を再び繰り返さないことが先人への誓いであり、未来への世代への責任」との思いがある。
 アピールは憲法9条のもとで集団的自衛権が許されないというのは学説上も、政府解釈でも、司法の場でも、半世紀以上とられてきた解釈であり、政府は立憲主義を蹂躙していると問題視した。
 また国民に対する誠実な説明責任すら果たしていない。この法案は未来に禍根を残す。日本がテロの対象国になる危険性が格段に高まるなど警鐘を鳴らしている。
 参加した教授らは「明らかに憲法9条に抵触している。憲法改正手続きで行うべきものを解釈変更で強行しようとしている。法治国家が成り立たなくなる」「本来憲法改正をしなければできないことを憲法違反の法律を作ってやっていこうという、危険な状況にある。立憲主義にも反する、閣議決定そのものが憲法違反」と強い危機感を示した。(編集担当:森高龍二)(了)

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「安保法案 東京大学人緊急抗議集会・アピール」実行委員会

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